Archive pour mars, 2022

こぼれ落ちる

そしてまた指からこぼれ落ちた。
人知れず旅立つ命を電話の向こうの声で知る、あるいは今となっては電話からの声でさえない。
SNSという現実をいくらでも操作できる阿呆からその知らせを受ける世界になってしまったけれど、死者が語らぬ死という知らせに慟哭したそれはもう4年前。

openradio No.196 2022/3/25 下弦
その知らせを他人事ながら受け、そう、選曲を変えたのです。
こういったアクションが、ある連帯になると信じて。

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Shinji Aoyama by Liberation

もの云はぬ人の心情春愁ひ

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選曲とは、だれかにごはんをつくるその献立を選ぶような

はたと思ったんですね。
かれこれ4年ほどになるのかopenradioを始めて。
回毎に意識することは自己心情もあり、やはり時勢に反応したい。
偶然にキャッチする吐息や、今風にいうなら「つぶやき」にも反応したい。
すると、子供の健康を考えながら献立を考える母、あるいは愛する人が食べたものを作るごはんの作り手、
そんな妄想の中で実は選曲をしていることに、気がつきました。

著作権のことはいろいろあるけれど、しかし今日openradioを聞いてくれるこの世界に居る、ささやかなリスナーの存在に、演奏者、著作権を持っている人々は、微笑んでくれると信じています。

サハラ沙漠トゥアレグ族、 »不幸な兵士(le soldat malheureux) »というブルターニュの歌、C型肝炎の痛みの中にきくジャズ、三宅純さんによるWhispered Gardenは時空次元を往来する、ささやく庭。

春満月の下希望なく歩く、しかし雨の隙間からは花の香。

openradio No.195 2022年3月満月はmixcloudからご視聴いただけます。

01) That’s All (Stacey Kent)
02) Arraiada (Jun Miyake 三宅純)
03) Ar Zoudard Maleurus (Erik Marchand / Thierry Robin)
04) Tree Song (Bruno Angelini)
05) Oualahila Ar Tesninam (Tinariwen)
06) It Might As Well Be Spring (Stacey Kent)

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声探す春満月は雨の中

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上弦-初春-原子力都市

3月10日上弦のopenradioでは選曲に一苦労しつつ、その理由は一冊の本にありました。

あの2011年2月末に読み終えた「原子力都市」。
日本の原発事情を矢部史郎さんがルポルタージュしたもの。
これは2010年に書かれており、日本からある方がフランスに送ってくれものでした。
アラブの春に気を揉みながら、そんな感情最中、送ってくれた人はこの本の出版社である以文社さんとの付き合い、そして六ヶ所村のドキュメンタリー映画にも携わった方。
遠い感覚を、正直感じ取ったのです。
そして、3月11日。
遠い感覚。
わたしはこのタイム感覚に誰にも語ることができないほどにショックを受けました。

あまりにもの現実を書物によって知り、その何週間後に現実を知ることになる。

そしてシンガーソングライターである寺尾紗穂さんによる「原発労働者」。
彼女なりの精一杯さがひしと伝わり、生の声を引き出す人間の姿が、切ない。
だって、誰もが本当を知りたいわけでしょう。

彼女の高校時代化学の先生が教室で繰り返し聞かせた話。

「ある有名な科学者には数人の弟子がいた。ある日、科学者は透明な液体を試験管に入れて持ってきて、それぞれにこの液体を調べよといって渡した。みんな、先生がくれたからどんな貴重な液体だろうか、と意気込んで調べ始めた。しかし、結果は水と少々の塩分だけ。さてこの液体はなんだったと思う?」

教室はシーンとなる。

「これは子どもを亡くした母親の涙だよ。」

淡々と、わたしに書物を、あらゆるタイミングで与えてくれた人。
今となっては、その気持ちにどうにか応えたい。
もちろんその方は見返りなど毛頭ない。
しかし、 »社会 »を人類学で語った人は、「ひとり一人が、それぞれに考えるという行為により、何か共感できる瞬間に希望を持った」人であったことは確かだ。
今となっては、死を前に、即物的夢想的的社会的…etc 距離なんてくそくらえ。

openradio No.194 3月10日上弦の放送はmixcloudからご視聴いただけます。

足早に立ち去る2月のことはもう過去、想いは祈り、祈りは想い。
セビリア、ベラルーシ、世界のどこにだって歌がある。

01) So Long (Rickie Lee Jones)
02) Chanson de Maxence (Richard Galliano)
03) The Four Seasons – Spring / Vivaldi (Max Richter)
04) Comic Love Songs (Byelorussia Folk Song)
05) Dat dere (Rickie Lee Jones)

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2011年南相馬。すべては野っ原となり、遠くに見える福島第一。

声なきに永遠に聞こゆる春の声

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ミモザ 秘めた愛は黄色だった

春の知らせ、香り、色。

ここフランスではミモザの開花は日本より早く、南仏からパリに届くのは2月中旬あるいは初旬が盛り。
今は連翹そして、なんといっても野に咲く水仙。
高校生だったわたしは行きつけのジャズ喫茶の店主に家の庭に咲いた芳香放つ水仙の束を渡したものでした。
もちろん父同伴で。

歩くことが好きだったある人の靴は黄色だったことを思い出した。
通勤、小旅行、確かに黄色でしたが、今はもう色あせているのでしょうね。

俳友の一句を

三寒を避けて四温に靴下ろす (牛眠)

眩暈がする香りなんです、ミモザって。
その香りを秘とするか、プルーストに倣って想起とするか。
確かなのは、あの愛は綿が飛んでいってしまったごとく、どこにもなにも残らなかったということ。

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ミモザに触発されて、久しぶりにnoteにてフランクの音楽評「勝手にレビュー」を更新。

大好きなミモザを贈る漢ゐて

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ウクライナ ざらつく透明な声に一涙を

羽田から発ち東京上空を北西へ、やがて乾いたあの土地そして雪に覆われた、人などいないのではないかと思うほどのあの土地を見るとき、それでも息を感知したくなります。
生の証とは、ざらつく透明な声である。

ウクライナの音を探したんですよ。
曖昧なしかしはっきりとした境界線のあちらとこちらで、音楽はやはりその境界を分かつものである、と思いたいのです。

openradio No.193 2022/3/3 新月はウクライナの声へ、捧げます。

01) Nad Dunaem (Dakha Brakha)
02) Ahovo Rabo (Joel Rubin Jewish Music Ensemble)
03) Bleu Lines (Massive Attack)
04) Sekkei (土取利行)
05) Small Car (Marvin Pontiac)

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残雪に轟く声の遠きかな

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