3月10日上弦のopenradioでは選曲に一苦労しつつ、その理由は一冊の本にありました。
あの2011年2月末に読み終えた「原子力都市」。
日本の原発事情を矢部史郎さんがルポルタージュしたもの。
これは2010年に書かれており、日本からある方がフランスに送ってくれものでした。
アラブの春に気を揉みながら、そんな感情最中、送ってくれた人はこの本の出版社である以文社さんとの付き合い、そして六ヶ所村のドキュメンタリー映画にも携わった方。
遠い感覚を、正直感じ取ったのです。
そして、3月11日。
遠い感覚。
わたしはこのタイム感覚に誰にも語ることができないほどにショックを受けました。
あまりにもの現実を書物によって知り、その何週間後に現実を知ることになる。
そしてシンガーソングライターである寺尾紗穂さんによる「原発労働者」。
彼女なりの精一杯さがひしと伝わり、生の声を引き出す人間の姿が、切ない。
だって、誰もが本当を知りたいわけでしょう。
彼女の高校時代化学の先生が教室で繰り返し聞かせた話。
「ある有名な科学者には数人の弟子がいた。ある日、科学者は透明な液体を試験管に入れて持ってきて、それぞれにこの液体を調べよといって渡した。みんな、先生がくれたからどんな貴重な液体だろうか、と意気込んで調べ始めた。しかし、結果は水と少々の塩分だけ。さてこの液体はなんだったと思う?」
教室はシーンとなる。
「これは子どもを亡くした母親の涙だよ。」
淡々と、わたしに書物を、あらゆるタイミングで与えてくれた人。
今となっては、その気持ちにどうにか応えたい。
もちろんその方は見返りなど毛頭ない。
しかし、 »社会 »を人類学で語った人は、「ひとり一人が、それぞれに考えるという行為により、何か共感できる瞬間に希望を持った」人であったことは確かだ。
今となっては、死を前に、即物的夢想的的社会的…etc 距離なんてくそくらえ。
openradio No.194 3月10日上弦の放送はmixcloudからご視聴いただけます。
足早に立ち去る2月のことはもう過去、想いは祈り、祈りは想い。
セビリア、ベラルーシ、世界のどこにだって歌がある。
01) So Long (Rickie Lee Jones)
02) Chanson de Maxence (Richard Galliano)
03) The Four Seasons – Spring / Vivaldi (Max Richter)
04) Comic Love Songs (Byelorussia Folk Song)
05) Dat dere (Rickie Lee Jones)

2011年南相馬。すべては野っ原となり、遠くに見える福島第一。
声なきに永遠に聞こゆる春の声