無数の故郷へ
宮本常一の命日1月30日。
紀伊国屋書店販売部の知人に頂いた写真集「昭和の情景」には、無数の故郷をみた宮本常一の眼差しがある。
彼は日本を歩き、土地風土の中に生きる人々を撮り、彼らの息を感知しつづけた。
2012年、生田緑地にある川崎市岡本太郎美術館で開催された
「記憶の島 ― 岡本太郎と宮本常一が撮った日本」。
二人の日本への眼差しは、彼ら観るもの(旅人)と、観られる者(その地に生きる人)との間にある空気がはっきりとカメラに収められている。
企画をされ、また展覧会を案内してくださった学芸員の仲野さんを、ある人物を介して知ることとなった。
その人物はマルセル・モースを生涯の研究対象とした。
戦前パリ、岡本太郎はバタイユやレリスとの交流と同時に、マルセル・モースの講義に出ていた。
学びの対象とは、人類の生きる姿。民族学、民族学と呼ばれるものだ。
宮本常一は戦前から日本中をくまなく歩き、民衆というものを民俗学の分野で調査し続けた。
それは今の映像人類学への予感でもあった。
同志として岡本太郎と宮本常一は時代を生きたことだろう。
経済という魔法に取り憑かれてしまった人々に、彼らは寄り添うことは決してないだろう。
人から人へ、音も言葉も香りも伝搬し、それらの要素は今日わたしたちの生の救いとなっている。
青森の農村へ。もちろん恐山へも。まさか六ヶ所村が核燃料サイクル基地になろうとは夢にも思わなかっただろう…
人は今日足跡残し雪の道