フォンテーヌブローの森
新緑は深緑へ濃淡を変えし森。
木洩れ陽の愛おしさは先へ続く道を予感させてくれます。
もちろん、この森の中で楽器を吹く気持ちよさは、何をたとえにできるでしょうか。
ここでまた生まれる音の世界。
世界は静寂とささやかな音に包まれることでしょう。
フォンテーヌとは泉を意味します。
泉とは、そう、わたしたちに命を与えてくれる。
水無月や夢の泉に光さす
新緑は深緑へ濃淡を変えし森。
木洩れ陽の愛おしさは先へ続く道を予感させてくれます。
もちろん、この森の中で楽器を吹く気持ちよさは、何をたとえにできるでしょうか。
ここでまた生まれる音の世界。
世界は静寂とささやかな音に包まれることでしょう。
フォンテーヌとは泉を意味します。
泉とは、そう、わたしたちに命を与えてくれる。
水無月や夢の泉に光さす
春はどこにあったのでしょうか。
衣替の時期を迎え、農作物との日々、太陽の光を背に働く人々の姿。
こういう人間の姿に、今宵の月が微笑んでいるようにも、思います。
ブラジルからひっそりとした愛の歌を、カタルーニャの五弦ベース、エクアドルのため息、麦と共に生きる秩父の音と、凶暴に、ハーモニーぎりぎりリズムをも縦横無尽に宙を飛び交うギターの音を。
1) Nosso amour de tanto tempo (Marcio Faraco)
2) Eosine (Renaud Garcia Fons)
3) Mi chagrita caprichosa (Shin Sasakubo)
4) Mugiuchi Uta (Shin Sasakubo)
5) Oceana (Ben Monder)
openradio 2020/5/30 上弦の放送はこちらから
https://www.mixcloud.com/makinakano/openradio-2020530-waning-moon/
衣替へピアスも替へて季節追ふ
生まれてはじめてCDガイド評というものを書いてみました。
今までライナーノート、書評、インタビュー、はたまたレストラン記事、フランスに働く職人を取材し文章にしてきましたが、今回は短いながらとても難しい作業であったことをお伝えします。
それはひとつにわたくし自身がこの作品に参加しているからかもしれません。
演奏者の命の一滴は様々な人の手を介して、今日わたしたちに届く音楽となる。
空間に満ち満ちる音の粒。
聴く者の心骨奥深くに沁み入り、この世の果敢なさを放つギター一本の音。
(余談ですが、フランス語で沁み入る=Pénétrerという動詞はセンシュアル Sensualな用語としても使われますね。)
是非お聴きいただけますように。
ギター奏者・笹久保伸 29枚目の最新アルバム Perspectivism
https://http://www.ahora-tyo.com/detail/item.php?iid=18653/
ご本人へ直接の注文をお勧めします。sasakubox@gmail.com
音楽雑誌ラティーナは、パリに渡ってからも長く読ませていただきました。
なぜ日本の雑誌をフランスで読めたのでしょうか。
それは、エスパスジャポンという40年に渡る文化センターの図書館に寄贈されていたからです。
恵比寿のあの事務所から、毎月パリに届く冊子。
紙媒体は最終号になりますが、これからはweb上で、益々興味深い音楽の世界を教えてくださることと思います。
関係者の皆様、まずはこの節目、ありがとうございました。
パリでの録音は3区にあるアーティストギルドの地下スタジオにて。
触るる音震へては消へ火照らせぬ
皐月花溢れる日々の中、どこもかしこもバラ。
それもよし。
ベランダには空へ向けてバラが気持ちよさそうにしています。
失敬しては活け、香りとその姿を身近に置く。
しかしこの季節、この季節にしかないニゲラの宇宙に惹かれます。
花弁が散れば、その中心からたくさんの種が生まれる。
インドではこの種をスパイスとして使います。
一つの花から多数の種が土に還り、また来年。
立体的で、線の細いこの花の構成は、やや大げさかもしれませんが、南方熊楠がいう萃点を彷彿させます。
ダマスのニゲラ。シリアのあの地から伝わったのでしょうか。
バラはその起源をメソポタミア、その後十字軍がヨーロッパに持ち込んだとされているそう。
フリーペーパー、Ovniの取材で中世の町プロヴァンのバラ園を訪ねたのもやはりこの時期でした。
https://ovninavi.com/743balade/
少しだけ見惚れていたひ夏ニゲラ
Eid-ul-Fitr。 断食月明けおめでとうございます。
4月の新月から1ヶ月。ムスリムの人々にとって一年の中でもとても大切な時間。
そして、目下世界は祈りに満ちているはずです。
今宵5月の新月のopenradioは、イードを迎える人々へのレスペクトとしてモロッコのマラーム、トルコ、シリア、エジプト、ギニアの音を…
https://www.mixcloud.com/makinakano/openradio2020523-new-moon/
00) Call to prayer (Sabri Moudallal)
01) Fangara Fangarie (Maalem Si Mohamed)
02) Karcigar zeybek (Trio Zartar)
03) Victor Challita (Stephane Tsapis/Lynn Adib)
04) Ya Roh (Naissam Jalal)
05) Sabou (Mory Kante)
ようやく汗ばむフランスの5月。
そっと蒔いたバジルの種はこの3ヶ月ですっくと伸び、今食卓に香りを添えてくれる。
ささやかに、マルシェで求める野菜、育てるハーブと共にある生活。
音の練習は上々に空を目指して。
趣味の種採取の成果も、今夏にむかて現れてくることでしょう。
暑さ覚えるこの時期は、バジルを添えた冷製パスタが、いい。
埴谷雄高、彼は不整脈を患っていたことから、実際に心臓がある瞬間止まる経験その中に、彼の形而上学的思想が生まれた、という話を聞きました。
これは身体的現象が思想を促すという面白い逸話です。
アンドレ・セゴビアの音楽にインスピレーションを受けた音楽家。
彼はセゴビア自身の演奏を目の前で聞いたことはないかもしれないけれど、残された音源から音の魂を内包し携え、今、違う形でわたしたちの心に彼自身の音楽を届けてくれます。
演奏を職能とするわたしたちの今は、ある試みの過程只中にあります。
生きた人間が生きる人間のいる空間で奏でるということの不可能性。
同じ空間に、今は亡き彼らの、思想、音楽という存在は今もわたしたちと共にある。
生きた音楽の中にあるはずです。
最小限の中にある音楽をびしびし感じ取る。
その音楽とはどこにあるのでしょうか。
それは、やはり最小限的関係性の中に在ります。
こうやって、生活の中のささやかな、しかし親密な関係の中にわたしたちは音楽を宿して生き存えてきたのだと思います。
ベートーベン、アルメニア、マーク・デゥクレ、セックストーイの歌、スティーヴィー・ワンダーを今宵下弦の夜に。
2020年5月14日下弦のopenradioはこちらから
https://www.mixcloud.com/makinakano/openradio2020514-waning-moon/
1) The Spinners (Tigran Hamasyan)
2) La chanson du sextoy (Maki Nakano)
3) L’annexe (Marc Ducret)
4) Golden Lady (Stevie Wonder)
5) Piano Sonate pathétique / Beethoven
(Daniel Barenboim)
茎立ちし、花が散ったら種を採り、次の恵みとする。
少し残しておいたクレソンを水にさせば、めくるめく命の循環を生む根が生える。
体も心もむずむずしてきました。
こんなにお天気な日が続けば、ものみな細胞は覚醒しますよね。
グロテスクなこの世の中において、個々人はアウトプットの方法として三種の神器となったTwitterやFB、インスタに委ねるしかない現世紀であるようです。
体感的距離をスローガンに、そしてアイロニーを携えわたしがすることは、5月11日以降の街の角で一人サックスを吹くことかもしれません。観客は晴天の雲としておきましょう。音の震えは森の中に、山の中に、そして水面に在ればいい。
もちろんサックスにマスクをつけてね。
2020年5月7日満月のopenradioはこちらから
https://www.mixcloud.com/makinakano/openradio202057-full-moon/
「小さきものたちの神」の著者であるアルンダティ・ロイ女史の「民主主義のあとに生き残るもの」の一節にはこうあります。
「人びとの心に触れる術[Art]。そのような術[Art]は人びととつながり、人びとをつなげて精神の共同体を作り上げることができる。これこそがわたしたちにとって最大の挑戦です。
ーある人は「どうやって反応(フィードバック)を得るのですか?」と聞きますが、
「交差点に立っていれば自然に得られます」と答えています(笑)。」
「資本主義の現実の-墓掘人-は、まるでイデオロギーを宗教とした枢機卿のように、妄想に憑かれたままその役目を終えるかもしれない。
いくら戦略に長けていたとしても、彼らには単純な事実が把握できないようだ
ー資本主義が地球を破壊している、ということを。
戦争と消費というふたつの古いトリックで過去の危機を切り抜けてきた資本主義だが、もうその手は効かない。
私は長いあいだアンティラの外に立って、陽が沈むのを見つめていた。
その塔のような豪邸建物が、高さと同じだけ深さを持っていることを想像してみた。
そうするとそれは27階建ての根茎を持っていることになり、地面の奥深く根を張りめぐらして地球から栄養を吸い尽くし、それを煙と金に変えてしまうことだろう。」
ーアルンダティ・ロイ
死の循環という希望ある世界と、飼い慣らされる生の不自由さの世界。
わたしたちの今はハイパーローカル、あるいは鶴見俊輔云う »Extremely Local »である土地土地で、ひっそりとそして揺るぎない生という時間を携える者たちへの眼差しから始まる。
窮屈な自由の果ては首夏に死す
自然には隷従しますが…命をないがしろにされた果て自由という名の似非社会による内的自由とどう対峙するか。
窮屈な自由。
母国を遠近からみる、そんな日々が続きます。
季語は今日から夏へと変わります。
古典声楽歌唱法タハリールの至宝、Alim Qasimovの声は、壮年よりまして御歳だからゆえの質感がたまりません。
フランスーアゼルバイジャンーペルー・アヤクーチョの音楽を、どうぞ。
0) No Title (Maki Nakano)
1) Ragalegria (Louis Winsdberg)
アルバム:Jeleo (2001)
2) Essoum Lennie-Bird (Stephan Oliva & Francois Raulin [P])
アルバム:Tristano
3) Mansuriyya (Alim Qasimov)
アルバム:Awakening
4) Pour que l’amour me quitte (Camille)
アルバム: Le Fil
5) Adios Pueblo de Ayacucho (Shin Sasakubo)
アルバム:Ayacucho I – Tradicional
2020年5月1日上弦のopenradioはこちらから
https://www.mixcloud.com/makinakano/openradio-202051-waxing-moon/